隣の店に行列ができはじめたのは六年前だという。それまでは、この通りに人はいなかった。
「うちは何も変わってない」と店主が言っていた。客数も、原価率も、閉める時間も。
カウンターは六席で、埋まっていたのは四席だった。
変えなかったことのほうが多い
品書きは十二品。二十年で二品減らして、一品足した。減らしたのは仕入れが安定しなくなったもので、足したのは常連に頼まれたものだそうだ。
値段は三度上げている。直近は二〇二四年で、五十円。
隣の話は聞かなかった
行列の理由も、そちらの料理についても聞いていない。聞けば答えたかもしれないが、この店の話を聞きに来たので。
帰り際、暖簾をくぐったところで振り返ったら、店主はもう次の仕込みをしていた。